社内コミュニケーションがうまくいく《ほっとひと息ヒント集 Vol.42》
「大丈夫?」と聴く覚悟
今年の年明けは、能登半島地震に航空機の衝突炎上事故など、
災害や事故の衝撃から始まりました。
被災された地域の方々、事故に遭遇された方々、関係者の皆様に
心よりお見舞い申し上げますとともに、一刻も早いご回復、復旧・復興を
お祈り申し上げます。
震災に関連するニュースの中で、これまでに災害を経験された方々の想いが
紹介されていました。
その中に、「『大丈夫?』と訊かれるのが辛かった」という言葉がありました。
もちろん、訊く側が心配してくれているからこその言葉だと理解はしていても、
「大丈夫、とはどんな状態のことを言うのだろう……」
「大丈夫じゃないよ、と本当の気持ちを答えたら困るのではないか」
複雑な気持ちのまま、「大丈夫。ありがとう」と答えるしかなかった、と。
日常生活の中でも、相手への気遣いや心配の気持ちの表現として、
「大丈夫?」という言葉を使うことは多いですし、訊かれることもあります。
本当に大丈夫なときは、ためらいなく「大丈夫です。心配してくれてありがとう!」
と言えるのですが、実は大丈夫ではない、というときは返答に困ります。
仕事上のことや、手伝ってもらうことが可能なことであれば、
「大丈夫?」と訊いてもらうことで、ヘルプが出しやすくなることもあります。
「実は、ここが上手くいかなくて…」と相談するきっかけになります。
ですから、「大丈夫?」という言葉で助かることも少なくありません。
ただ、災害時のような深刻な状況のときには、「大丈夫なわけがない」ので、
訊かれた側が、「何を訊かれているのか」、「何を答えればいいのか」、
それを考えることで傷つく体験になることもあります。
本当に心配で、何か出来る事はないか、という一心で言葉をかけたいとき、
「この言葉にどのような返事が返ってくることを自分は想定しているだろうか」
ということを、少しだけ立ち止まって考えることが大切なのでしょう。
「大丈夫じゃないです」と被災の様子を話されて、聴く覚悟はあるだろうか、
「大丈夫です、ありがとう」という返事だけを想定していないだろうか、
そう考えた上での言葉であれば、言葉をかける側の覚悟も伝わることと思います。
「大丈夫ではないと思いますが、身の安全が確保できていることを願っています。
こちらでできるサポートがあれば、いつでも知らせてください」
どのような言葉が正解なのかはわかり得ませんが、相手にすぐの返事を
求めないメッセージとして伝えるのも選択肢の一つだと思います。
ほっとしてもらえる言葉になっているだろうか、
自分の安心のための言葉になっていないだろうか、
言葉を発する覚悟について考えるきっかけにしたいと思います。
(柴村 馨)