事故予防コミュニケーション:普段の行動の中にもある予防コミュニケーション
道路の真ん中に引かれている中央線の幅は、何センチだと思いますか。
気にしていなかったという方も多いと思いますが、実は幅12㎝から15㎝で引かれています。
見方を変えるとたった12㎝から15㎝の線を隔てて、対向車とすれ違っているということです。
中央線から車体までの余白がありますから実際には、
もっと間隔が開いた状態で、すれ違っていますが
「対向車は中央線を越えてこない。相手もルールを守ってくれる」という信頼があり、
ルールを逸脱しないことが当たり前として根付いているから、
何も考えずに、きちんと並んで走行できます。
歴史を遡ると昭和8年頃から中央線を引き始めたようです。
徐々にエリアを広げ、中央線に沿って追い越しなどせずに並んで走行した方が
無駄にブレーキをかけたり、相手にブレーキを踏ませることもなく、
事故もなく、スムーズに往来できるということが浸透していった結果、
中央線の存在が当たり前になったのでは、と考察します。
お互いに整然と枠内を走行し、中央線をはみ出すと対向車に迷惑だな、
と配慮した暗黙の交通コミュニケーションになっていると思います。
昭和40年頃の夜間、
1台のスポーツカーが前方の大型トラックを追い越そうと中央線を無視してはみ出しました。
対向車線にはみ出して目前に迫っていたのは、ミキサー車でした。
そのミキサー車が急ブレーキをかけ、
このスポーツカーは大型トラックの前方に割り込むことが出来ましたが、
ミキサー車の後続車の普通乗用車は止まりきれず、ミキサー車に追突しました。
追突のはずみで、ミキサー部分が脱落し、普通乗用車のボンネット部分を直撃して
運転者は足を挟まれてしまうという痛ましい事故がありました。
警察による啓発や報道での事故の周知、教習所での教習学習、免許更新時の事故情報、
さまざまな「知る機会」が度重なって、「中央線をはみ出さない」ことが当たり前になっています。
今では、線を踏んだだけでもクルマから、ピピピッと警告音が鳴り、
元に戻る行動を促してくれます。
繰り返し、繰り返し何度も思い出す機会があるのですね。
こうして、一人一人が「中央線をはみ出ず枠内を走行する」行動を取り続けることが
事故予防に繋がっています。
中央線のように当たり前すぎて気にもしていなかったルール(仕組み)からなる行動の中には、
自然に事故予防になっているものがあります。
普段の生活の中でも、電車やエレベーターは降りる人が先とすることでスムーズです。
これはマナーですね。
階段も「左側通行」などの看板と矢印を表示しています。
いずれもぶつかったり、転落したりすることを予防しています。
ルールやマナー、エチケット、もちろん法律も含めて、
事故や無駄を予防し、人が安心してスムーズに行動できるように配慮して作られていると感じます。
作ったルールが「安全だから安心して、スムーズに無理なく行動できる」ことならば、
習慣化され、安全文化として根付いていきます。
(森川美希)