社内コミュニケーションがうまくいく《ほっとひと息ヒント集 Vol.31》

切迫した対応時こそ気持ちよく!

夏本番ですが、台風の動向が気になる季節でもありますね。

強い勢力を維持しながら、ゆっくり進む台風の場合、被害も大きく長期間にわたります。

どうか、皆様ご安全にお過ごしいただけますようにと願う日々です。

天候が不安定なときや突発的な事故等があったときは、交通機関に乱れが生じ、

仕事上の移動にも影響が出ることがあります。

移動する側のこちらも多少の焦りを感じますが、対応する側はもっと焦ることでしょう。

つい先日、出張の際にそのような場面を体験しました。

搭乗予定の飛行機よりも前の便に乗ることが急遽決まり、

搭乗口近くのカウンターで手続きをすることになりました。

約20分後には離陸予定の飛行機でしたので、荷物の積み替えのことも考えると

時間的にかなり切迫した手続きになります。

手続きを必要とする乗客は2名、カウンターの中のグランドスタッフ(GS)さんも2名。

ベテランの方と3年目くらいの方かとお見受けしました。

ベテランの方は、落ち着いた口調で少し急ぎつつ手続きの案内を進めてくださいました。

と同時に、少し焦りを感じておられる様子のもう1人のGSさんにも、

「まず、この手続きをして、荷物も確認してもらえば大丈夫です」

「まだ、時間も大丈夫です。落ち着いて進めてください」と

穏やかな声で指示を伝えるご様子が頼もしく、安心感がありました。

そうするうちに、もう1人乗客が加わり、カウンター内にも新たにGSさんが加わり、

指示を出したり様子を見守ったりする対象が増えた状態となりました。

それでも、ベテランのGSさんは目の前の乗客(私です)の手続きに集中しつつ、

左右の手続きにも目配り気配りをされている状況でした。

きっちりと手続きを済ませて「手続きは滞りなく終えております。もう間もなく

搭乗が始まりますので、搭乗口へとお進みください」と、にこやかに穏やかに

案内してお辞儀もされました。

そして、私が移動し始めてから、他の乗客の手続きのサポートに入られる様子に、

「プロの仕事の気持ちよさ」を教えていただいた気がしました。

「時間的切迫感」というのは、人にとって非常に大きなストレスとなります。

時間は待ってくれませんので、期限までに考えたり動いたりしなくてはならない、

そのことが脳に大きな負荷をかけることになるのです。

特に、業務への不慣れ感があるときや、自分の業務遂行時間が把握できる前などは、

時間的に切迫する状況が焦りを生むこととなり、よりストレスとなります。

このようなときに、ベテラン職員が自分の遂行時間や遂行のスムーズさと

他の職員を比較してイライラしてしまうことがあります。

その結果、きつい言い方で指示をする、イライラを態度に出すという人もいます。

しかし、これは百害あって一利なしです。

言われた職員は萎縮して動きが悪くなったりミスをしたりすることにつながりますし、

それを目にするお客様や他の職員にも嫌な印象しか残りません。

今回の事例のベテランのGSさんのように、切迫しているときだからこそ、

穏やかな声と表情で、安心感をベースとして動いてもらえるようにサポートするのが

ベストな対応方法なのです。

「不快」は脳にストレスを与えます。反対に、「快」は脳の働きを良くします。

一緒に働く職員に、そして目の前のお客様に「快」を感じてもらえるような

コミュニケーションは、切迫時にこそ必要なものだということを忘れずにいたいものです。

(柴村 馨)