「知っている」と「したことがある」の間の大きな壁

もう20年以上も前、冠婚葬祭の会社に勤めていたときのことです。

そこで新葬祭場をオープンすることになりました。

当時、異業種から入社した私は「オープニングイベントをしましょう」と上司に提案しました。

葬祭場に気軽に相談に来てもらい、地域の皆さまに可愛がってもらうには

「最初の一歩を踏み入れてもらう」ことがまず、必要と思っての提案でした。

知らない場所は敷居が高い。

知っていても、入ったことがないところには行きにくい。

だからこそ一度、来るだけで良いから来てもらう。

上司には想像がつかなかったようでしたので補足しました。

「クルマのディーラーの新車発表フェアのように、華やかに新装開店イベントをしましょう。

来場者には記念品を渡し、お子様にはお菓子をあげて、式場にはアニメを流し、

控室や小式場ではお茶とスイーツでおもてなしをしてパンフレットを持ち帰って貰いましょう」

そうすると、上司の目が輝きました。

「記念品は何が良いかな。イマドキは骨壷や仏壇も洋風で美しい。

それを展示して見てもらうのもいいな。

お念珠などの仏具もカラフルだし見てもらおう、触れ合っていただこう!」

私たち葬祭場のことを近隣の方々に、よく知ってもらえる機会になる。

コンセプトが決まると、そのあとはスムーズでした。

準備が整い、新葬祭場のオープン当日を迎えました。

まるで、スーパーの売り出しの日ように、

「来場者に玉子1パック10個入りプレゼント!お子様にはお菓子を差し上げます」と、

新葬祭場のチラシを新聞折り込みすると、

当日は、主婦の皆さまがご主人を連れて、大賑わいとなりました。

これで、地域のご夫婦に知ってもらえる。

この地域の一員として認知される。きっと、もしものときに思い出してもらえる。

その先には、最高のサービスの提供が必要ですが、

このイベントの成果に嬉しくなり、夏前の梅雨時期には「初盆フェア」も企画しました。

行ったことがある、したことがある、という「経験した状態」になってもらうことで、

次のアクションを取ってもらいやすくなります。

経験があれば2回目のときには、すぐに行ってみようかな、やってみようかな、

と思ってもらいやすくなります。

このときの企画の経験から、

どんなことでも、まず知ってもらい、やってみてもらう“体験・体感”を大切にしています。

ひとが行動するきっかけは、知っていることをやってみて、

自分に合うこと、自分に合うやり方に出会うこと、

そして、これが出来ると続けていける、そう思います。

※この記事は、2018.3.20に掲載したブログを元に加筆して再掲しています

(森川 美希)