社内コミュニケーションがうまくいく《ほっとひと息ヒント集 Vol.66》
ハラスメントにならないコミュニケーション
「ハラスメント防止」の取り組みが中小企業でも義務化されてから、
もうすぐ3年になろうとしています。
弊社でも、毎年のように「ハラスメント防止研修」のご依頼を受けます。
何がハラスメントに当たるのか、ハラスメントを防止するにはどうするか、
ハラスメントを受けたり見かけたりしたらどうするか、等の内容をお伝えして、
ハラスメントの防止と早期対応について具体的に考えていただいています。
このような研修の中でよく相談されるのが、
「何でもハラスメントと言われそうで、関わるのを避けたくなってしまう」
というものです。

確かに、こちらにそのつもりが無くても、相手にとって嫌なものであれば
ハラスメントになるのかと思うと、関わりを躊躇してしまいそうです。
相手のためを思っての注意が、「ひどい言い方をされた、ハラスメントだ」
と言われかねないとすると、注意もできない、という声も聞きます。
厚生労働省の「パワーハラスメントの定義」は、
①優越的な関係を背景とした言動であって、
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
③労働者の就業環境が害されるもの、
この①~③の3つの要素をすべて満たすもの、とされています。
相手に「注意」を伝えるときに、周囲の人から見ても「あれはないな」と
思われるような暴言や威圧的な行動があり、それによって相手が過緊張に陥り、
通常業務に支障が出てしまう、これは明らかにパワーハラスメントに該当します。

しっかりと注意を伝えたいときに、どの言い方まではセーフで、
どの言い方だとアウトになるのか、判断が難しい -本当にそうでしょうか?
確かに、人によって言葉の受け取り方が違うこともあります。
同じ言い方に対しても、「このくらいは普通」「いや、ひどすぎる」と
異なる反応もあるでしょう。
同じ人が相手でも、その人の状態(体調や気分)による受け取り方の違いもあります。
それでも、注意を伝える前に、
「この言い方しかないだろうか」「他の言葉を選べないだろうか」と
考えてみようとするかどうか、それが判断基準になりそうです。
注意を伝えるときの目的は、「理解して行動を変えてもらうこと」です。
相手が傷つき、萎縮して動けなくなるような言葉や態度を出す意味はありません。
目的を見失い、罰するための言葉や態度になったとき、ハラスメントになります。
「この言い方じゃなくてもいいかも。届けるための言葉を選ぼう」
ハラスメントにならないコミュニケーションのために覚えておきたい一言です。

(柴村 馨)